大使室より(オウラブル・トース氏の逝去を悼む)

令和3年6月29日
オウラブル・トース氏の逝去を悼む
日本とアイスランドとの関係に長年寄与されたオウラブル・トース元名誉総領事の訃報に接し、ここに深く哀悼の意を表すると同時に、故人の生前のご貢献に対し、改めて感謝の意を表したいと思います。
 
トース氏は、1981年から2001年5月にレイキャビクに大使館が開設されるまで、20年にも渡り、当地で日本の名誉総領事とし活動されました。名誉総領事の職務は世間にあまり知られていませんが、大使館が設置されていない国や地域で任命されており、大使館に代わって、日本の利益を守り、邦人保護の支援や、文化交流の促進などの活動を行います。
 
大使館がまだ設置されていない頃、アイスランドにおいては、同人の存在は当地在留の日本人たちにとってはいざというときに頼れる親のような存在だったことでしょう。また、アイスランドの人たちに対しては、遠い日本という国を知るための窓口としての役割も果たしたに違いありません。
 
ちなみに、名誉総領事に対して金銭的な報酬、給料は一切支払われません。無給の名誉職です。
 
ソルザソン美也子さんが、2017年に書かれた本には次のようなエピソードが紹介されています。1986年、レイキャビクで歴史的な米ソ両国の首脳会談が開かれたとき、たくさんの日本の取材関係者がこの地を取材のために訪れましたが、同氏は会談の行われた期間、ご自分が社長を務める会社の事務所をこうしたメディアの人たちに提供し、ボランティアでドライバーをされた息子さんとともに、取材活動の支援をされた、ということです。
 
時代は代わり、冷戦は終結し、レイキャビクに大使館が設置されてから、早くも20年の月日が過ぎましたが、私たちは、アイスランドにおけるオウラブル・トース氏と同人の活動を支えたご家族たちの献身を忘れることは無いでしょう。
 
オウラブル・トース氏には、その長年の功績に対し、2002年に日本政府から旭日中綬章が授与されています。
 
6月29日記