大使室より(北極サークル)

令和3年10月20日
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先日、当地の国際会議場「ハルパ」で行われたアークティック・サークルのアセンブリー(全体会合)に出席しました。
 
コロナ禍も大分落ち着いたとはいえ、1400人もの参加者がこうした国際会議に集まりました。コロナ以後、大規模な対面での国際会議は中止、あるいは延期が続くなか、かなり異例なことだったと思います。
 
それでもコロナウイルスの影はそこここに感じられました。まず第一に、参加にあたり抗原検査での陰性証明が必要だったこと。それも48時間だけ有効。私も参加直前に受けたのですが、3日目の朝には再度受けなければなりませんでした。
 
また、外国からアイスランドに入国する場合、ワクチン接種証明書を持たない入国者は5日間の隔離と隔離後のPCR検査が必要なのですが、これにロシア人の参加予定者のほとんどが引っかかり、北極評議会の議長国にも関わらず、そのプレゼンスは低いレベルにとどまりました。(ロシア製のワクチン接種は有効とは認められていないのです…。)
 
同様の事情は中国本国からの参加者にも当てはまり、中国帰国後、再入国の際の隔離の制約等があることもあって、中国人の会議参加者は一部の大使館関係者や海外在住の研究者、学生に限られました。
 
再入国の際の制約については、実は日本からの参加者についても同様です。笹川平和財団の関係者3名、文部科学省、極地研、北海道大学から各1名、計6名が遠路はるばる日本から出張で来られましたが、彼らは帰国後、14日間(場合によっては10日間)の原則隔離されることになります…。
 
こうした事情があり、海外からの参加者にやや偏りがあったことは否めません。目立ったのは米英、そしてグリーンランド、フェロー諸島からの参加者です。
 
オープニングのセッションでも、グリーンランドから大臣、フェロー諸島からは首相も参加。近くCOP26をホストするスコットランドからは第一大臣も。実はアイスランド訪問中の皇太子に随行されたデンマークの外務大臣もこのセッションでスピーチされたのですが、順番もグリーンランドの大臣の後で、やや影が薄かった印象があります。
 
グリーンランドからは氷のプレゼントも!
期間中、会場入口に巨大な氷が設置されていました。また、最終日の夜はグリーンランドナイトで、グリーンランドの音楽家による生演奏や、グリーンランド産の食材をふんだんに使った料理も振る舞われました!
 
グリーンランドは独立国の地位は有しておらず、北極評議会のメンバー国は一応デンマークなわけですが、デンマーク本国は実は地理的に北極圏には無いわけで…。北極を巡る議論の場では、やはりグリーンランドやフェロー諸島の存在感、発言の重みが強く感じられます。
 
アイスランドからすれば、グリーンランド、フェロー諸島は主権国家では無いにせよ、地理的にももっとも近い隣「国」。歴史的にもデンマーク王国下での統治をともに経験しており、地理的にヨーロッパからは離れた島嶼国で、漁業が重要産業であることなど共通点も多く、人的な交流も盛んです。彼らがこうしたフォーラムで目立つことについては、アイスランドとしても歓迎するところなのだろう、と改めて感じました。
 
日本としては、今年5月に東京で開かれた第三回北極科学大臣会合(ASM3)の引き継ぎの場ともなり、私が政府を代表して全体会合で会議の結果を報告、会議の意義を説明する形となりました。また、次の会合をホストする仏に会議運営を引き継ぐ趣旨で、壇上で会合レポートをわたす役割を担いました。
 
壇上で演説するのは、やや緊張もしましたが、大使としては晴れの舞台で良い経験をさせて頂きました…。