大使室より(アイスランドの大統領選)

令和6年5月29日
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共和国であるアイスランドには、世襲の国王陛下や女王陛下は存在しませんが、その代わりに大統領がいます。議院内閣制の議会制民主主義の国なので、国政の実権は議会(アルシンギ)とその多数派が担う内閣にありますが、議会選挙後の首班指名など、国政の難しい場面では大統領のイニシアチブが期待される場合もあり、また、めったに行使されることはありませんが、議会の議決した法案や条約への署名を拒否して国民投票にかける権限を有するなど、象徴的な国家元首としての役割以上の政治的な役割を担う場合もあります。
 
大統領は国民による直接投票で選出され、任期は4年。再選禁止規定はありません。
 
本稿執筆時点での大統領はグズニ・ソーラシウス・ヨハネソン氏。2016年の就任以来、2期目ですが、今年の初め、3期目の再選は目指さない、と明らかにしました。[1]
 
というわけで、今年の大統領選は12名の大統領候補が乱立する混戦状態に。首相を辞任して大統領選に立候補したカトリン・ヤコブスドッティル候補が最有力とみられていましたが、直近の世論調査の結果では他の候補も善戦しており、結果は予断を許しません。
 
選挙は6月1日に実施され、翌2日までには結果が出る見通しです。[2]
 
 
[1] 過去のアイスランドの大統領選では、現職が再選を目指す場合には、選挙はほぼ無風で現職が選ばれています。グズニ大統領の前任のオーラブル・ラグナル・グリムソン氏は1996年から2016年まで5期20年にわたって大統領の座にありました。これはアイスランド史上最長です。
[2] トップの候補の得票率が5割に達しない場合、後日、上位2名の決選投票がなされる仕組みの国もありますが、この国では大統領選の投票は1回のみ。即日開票で最多得票を獲得した候補に決まります。