大使室より(6月のアイスランド)

令和2年6月22日

 
      日本大使公邸にて             アイスランディック・ポピーも咲き誇る

 
アイスランド国内の新コロナ感染症は5月以降さらに減り,6月には通常の生活に戻った感があります。レイキャビクの道路は以前は閑散としていましたが,現在は朝と夕方の通勤時には渋滞さえ起こるようになっています。

今月15日には,アイスランド政府はEU・シェンゲン協定国および英国からの入国者に対する新たな軽減措置を決めました。それは,これまでは,入国後,「二週間の自己隔離」が義務づけられていたのに代わり,「空港でのPCR検査」を受けることで入国できるというものです。しかも,同検査は6月中は無料で受けることができます(7月以降は1人15,000アイスランド・クローナ)。やはり,夏期休暇期間を前に外国客を受け入れることが,主要産業の一つである観光業を維持する上でやむを得ないという事情があるのでしょう。15日には,その結果,一日で900名が入国したということです。

 アイスランドは日に日に昼間が長くなり,現在は夜中でも明るいです。今月20日の夏至には,それが頂点に達します。国内のゴルフ場では夜中でもラウンドできるほどです。天気が快晴で風が弱い日には,気温は15度ぐらいまで上がります。この国は常に風が吹いているのが特徴で,それがなければ,体感気温はずっと高いはずです。また,アイスランドは全く緑がないような記述をされることがありますが,それは内陸の方で,レイキャビクでは夏は芝生も青々とし,各家庭ではチューリップなどの花を所狭しと植えています。アイスランド人にとっては,夏は思い切り楽しむためのバカンスの季節であり,逆に,日照が数時間しかない冬は,仕事や読書の季節なのかもしれません。

 6月17日はアイスランドの独立記念日でした。この日は,19世紀にデンマークの支配下にあったアイスランドの独立運動を指導した,ヨン・シグルズソンの誕生日で,1944年の独立の後,彼に敬意を表して独立記念日とされたものです。当地の外交団も,独立記念式典に招請され,私も行って参りました。式典は,2部に分かれ,最初は国会(アルシング)の隣にある教会でミサと説教が行われ,その後,国会前のシグルズソンの銅像の前で,ヨハネソン大統領が献花し,ヤコブスドッティル首相が演説を行いました。首相は,シグルズソンの業績をたたえるとともに,最近のコロナによる脅威を何とか切り抜けたアイスランドをシグルズソンは誇り高く感じているだろうと述べました。同時に,15日にアイスランドは入国を容易にする措置はとったが,国境開放に伴うリスクには十分注意していく,3月4月の危機は乗り切ったが,今世紀最大の経済ショックに数えられる損失や失業も生まれており,引き続き忍耐と努力が必要だと述べておられました。更に,聖歌隊が国歌などを歌い,国会(アルシング)の二階の窓には金管楽器を携えた人が数名で演奏を行いました。今回の行事参加者は例年より限定されていて,私も妻を同伴することはできませんでしたが,天気も良く,さわやかな式でした。

 これからアイスランドは夏本番を迎えることになります。