大使室より(就任のご挨拶)

令和2年5月13日
ヨハネソン大統領への信任状捧呈時のお写真 ヨハネソン大統領への信任状捧呈時
皆様,初めまして。本年2月5日付で駐アイスランド日本国大使を任命されました小澤 仁です。3月17日に着任しましたが,ご案内の通り,アイスランドを含め欧州に新コロナウィルス感染症が蔓延し始めていた時期で,アイスランドにおいても,その後1ヶ月半は緊急事態下の自粛措置が実施されました。私は,着任直後,当地外交団に個別にご挨拶を始めましたが,多くの公館では既にテレワーク中心の最小限の体制が始まっており,事態の深刻さは日を追うごとに高まっていました。

このような状況を踏まえ,当館も現地職員を含め,館員間に感染が広がらないよう,最大限努力することが重要と考え,体制を縮小し,テレワークを組み入れた体制をとってきています。初めてレイキャビクに住むことになった私ですが,このような状況ではレイキャビク市内を車で走った程度で,当面は公邸周辺の散策程度しかできていないのが現状です。一度,ダウンタウンの中心地の方も車で行ってみましたが,すべてのレストランや店が閉まり,誰も歩いておらず,ゴーストタウンのようでした。

アイスランドは3月後半には,人口比の感染者比率が極めて高い状況にありましたが,その後,政府と国民が一体となって感染拡大防止に向けた自粛措置を強力に進めた結果,4月後半より新規感染者数は減少に転じ,最近数週間は新規感染者がゼロもしくは一桁となっています。アイスランド政府としては,状況に楽観的になることを慎みつつも,小中学校の再開,集会規制の緩和(20人以上の集会禁止から50人以上に拡大),一部事業の再開などの部分的な規制緩和を発表しました。今後,アイスランド政府にとっては,感染状況を注意深くフォローしつつ,観光を中心とした経済的打撃に対する支援策や今後の経済政策をどのように進めていくかが課題となってくると思います。これは国際社会のすべてのメンバーが直面せねばならない深刻な問題であるといわざるを得ません。

私の着任以来,実質的な外交活動はほとんどストップの状態にありましたが,5月6日にヨハネソン大統領に信任状の捧呈を行うことができました。これでようやく大使としてスタートラインに立てたという気持ちです。大統領は,当面,皆,新コロナウィルス対策に全力を傾注せざるを得ないが,社会が平常に戻った後は,日本とアイスランドは互いの交流を活発化し,関係をさらに深くしていきたいと述べておられました。また,通常,信任状捧呈式には館員全員を呼んで記念撮影をし,その後,アイスランド要人とのレセプションを開くのであるが,現状では集会は難しいためそれを断念せざるを得なかったことを理解していただけると有り難い旨述べられました。

新コロナウィルス感染症による国際社会のいわば「異常事態」が今後どうすすんでいくのかは,正直誰も予測がつきません。広報文化活動を含めた外交行事の予定もなかなか立てにくいのが現状です。そのような状況下ではありますが,大使館として何が求められるかについては常に柔軟に考えながら業務を継続していく方針です。