大使室より
令和2年2月7日
Farewell !



改まってお別れをする,”さようなら”を言うことは,どんな時でも容易なことではありませんし,少しセンチメンタルな気持ちにもなってしまいますが,とうとうその時がやって来ました。
振り返って見ると,今から3年4ヶ月前の2016年11月に当国に着任以来,当国で仕事が出来ることに希望を膨らませながら,日本とアイスランドの関係や,アイスランドに関する様々なことを,出来るだけ多くの方々にご紹介出来ればとの想いで,このエッセイを書いて来ました。
最後となる今回は,少し長くなりますが,二国間関係の進展状況を簡単に振り返りつつ,当国で出会った数多くの方々に対する感謝の念を綴らせて頂きます。
改めて申し上げるまでもありませんが,アイスランドと日本は,地理的には遠く離れていますが,島国で同質性の高い社会である,伝統的に水産業が盛んである,自然に恵まれる一方で火山噴火や水害といった脅威にも対峙している,法の支配・人権尊重・民主主義と言った普遍的価値観を共有している,と言った多くの共通項を有しています。
世界中で,貧困やテロ,地球温暖化と言ったグローバルな課題が山積するなか,この様な共通項や同じ志を持った両国が,関係を一層強化の上,この種の課題に対処して行く必要性が今以上に求められている時はありません。
幸い,両国間の関係はこれまでにないほど強固になり,多くの分野で交流が活発化しています。
政府レベルでは,アイスランド側からは,現職の大統領や前大統領,さらには外務大臣をはじめとする多くの閣僚クラスの初訪日が相次ぎ,日本からも外相を初めとする多くの大臣,国会議員の方々の訪問が定着して来ました。
2020年も大統領や前大統領が再訪される他,多くの閣僚の訪日が予定されており,11月には東京で第三回北極科学大臣会合が日アイスランド共催で開催される予定です。
法制度面では,租税条約の締結・発効とワーキング・ホリディ制度の導入が特筆されますし,航空協定やFTAの締結を目指した実務レベルの協議もスタートしました。
ビジネス面では,伝統的な魚類・水産物に加え,ラム肉や馬肉,医薬品や化粧品の対日輸出が増加し,近々,日本でのスキールの製造販売も開始されます。日本からも自動車や電気製品等の輸入に加え,新たにIT分野や観光分野への投資も検討されています。
文化・教育分野では,大学間での交換留学生制度が更に強化されると同時に,共同研究等も増加の一途にあります。アイスランド交響楽団の長期日本ツアーや,ピアニスト辻井伸行さんの当地でのコンサート等も実現しました。
大使として,また大使館として,これらの進展に多少なりともお手伝いが出来たことを大変嬉しく思っていますし,日アイスランド双方の関係者の方々のご尽力とご支援に改めて御礼申し上げたいと思います。
個人的な体験に触れさせて頂くと,当国での滞在は魅了されることの連続でした。滞在中,主要な地方都市を訪問する機会にも恵まれました。北部のシグルフィヨルズルやフーサヴィーク,南部のウエストマン諸島やヴィーク,西部のイーサフィヨルズル,東部のセイジスフィヨルズル,等々,多くの都市を訪問することが出来ました。
どこを訪問しても,息を呑むほどの自然の美しさに魅了されましたが,何よりも感動したのは,その土地土地の人々の温かいおもてなしでした。
また,公邸にお越し頂き,親しくお話を伺った数え切れない程の多くの方々との有益で楽しかった時間も忘れることが出来ません。
美しく,活気に満ちた当国を離れることには,一抹の寂しさを禁じ得ませんが,当地で得ることが出来た多くの友人や知人の方々とのつながりは何物にも代えがたい宝物として,いつまでも心の中に残るものと思います。
日本とアイスランド両国関係の一層の発展を祈りつつ,後任者にバトンを託します。
皆さん,長い間のお付き合い,ありがとうございました!