大使室より
平成30年8月15日
サガとマンガ



左から)サガの原本、大使公邸レセプションでの全員集合写真、ノルディックハウスでの幸村先生ご講演の様子
先日、当地にて「第17回国際サガ会議」が開催されました。この会議は世界中のサガの研究者の方々が3年に一度、一堂に会するもので、第1回目は1971年に英国エディンバラで開催され、その後は関係各国で持ち回り、本国とも言うべきアイスランドで開催されるのは今回で3回目でした。
サガというのは、ノルウェーやアイスランドで起きた出来事をベースに、12~13世紀に当国で書かれた様々な伝記や物語の総称で200話ほどが伝承されています。特筆されるのは、当時のヨーロッパ、特に北欧の国々では、「文字を書いて記録する」という習慣がアイスランド以外では殆ど発達せず、当時のことを知る手がかりは、このサガしかないとも言われるほどです。
今年の会議には世界中から4百名前後の学者・研究者の方々が集まりましたが、大宗を占めるヨーロッパ各国やカナダ・アメリカからの参加者に交じり、日本からも複数の大学教授・研究者の方々が参加されました。
一般の日本人にとっては、サガはやや遠い存在であるかと思いますが、実はその多くは「日本アイスランド学会」を中心とする研究者の方々のご尽力により日本語訳されていますし、さらに言えば、間接的にサガをモチーフとした漫画も描かれています。例えば、複数の著名漫画家の方々が執筆されている「ニーベルングの指環」は、ドイツ・オペラの巨匠リヒャルト・ワーグナーが創りあげたオペラをモチーフにしたものですが、ワーグナーはこのオペラの着想の一部を「ヴォルスンガ・サガ」から得たとされています。
そして最近では、漫画家の幸村誠さんが「ヴィンランド・サガ」と言う、まさに実在する2つのサガをモチーフにした長編マンガを連載されていて、近々アニメ化されテレビ放映も開始されると伺いました。アイスランドのサガが日本人にとってより身近な存在になることは間違いないことでしょう。
アイスランドのサガと日本の漫画の関係については、寺村さんを含め、国際サガ会議に参加された日本人研究者の方々を公邸でのレセプションにお招きした際、冒頭の挨拶で以下の様な大胆な私見を披露させて頂きました。
「漫画が日本で本格的に発展したのは戦後であるが、漫画のルーツは12~13世紀頃の鳥獣戯画と呼ばれる絵巻物にあるとの説もあり、これは丁度アイスランドでサガが書かれた時期と符合する。それから8~900年後の今、サガと漫画が出会い、幸村さんの手によって両者が融合したことは、決して偶然ではなく、必然であったものと思う」
この真偽については、皆さんのご判断にお任せしたいと思います。