大使室より
平成31年2月26日
レスキュー隊


今から百年ほど前の1918年には、荒波に揉まれながら漁業を営む夫たちを心配したウエストマン諸島の夫人達によって相互救助組織、所謂レスキュー隊が組成されたそうで、爾来、同様の非定常組織が国中に組成されました。
そしてこれらの組織が1999年に合体して「アイスランド捜索救助協会」(英語では ICE-SAR, Icelandic Association for Search and Rescue) と呼ばれる全国的な組織が設立された結果、現在でも、殆どの遭難事故の場合、この組織に所属するレスキュー隊が全面に立って、捜査・救難活動を行うことになっています。
この組織で特筆されるのは、全国に100前後存在するレスキュー隊の隊員、約1万人の殆どがボランティア・ベースの隊員であることです。隊員達は本職を別に持っているものの、事件・事故の発生に備え、常時4千人がスタンバイ体制をとり、毎年1200件に及ぶ緊急事態に対応しているそうです。
昨年、この協会の本部ビルを訪問する機会がありましたが、そこにはレスキュー隊だけではなく、警察、沿岸警備隊、航空局の出先等の事務所もあり、自然災害や遭難事故が発生した際には、関係者が一堂に会し、直ちに対応策を検討・決定し、最寄りのレスキュー隊員に出動命令を発する体制になっていました。
ボランティアとは言え、レスキュー隊の一員になるには、様々な応急処置や特殊技術を学ぶ必要があり、さらにリーダー格になるには2年以上に亘る厳しいトレーニングが課せられる由です。また、レスキュー隊ではボートや雪上車、ヘリコプター等、警察や沿岸警備隊顔負けの資機材も保有していますが、これらの所要資金は、大晦日に販売する花火の売り上げで全体の7割を、残りの3割はキーホルダー等物品の売り上げや国民からの募金等で賄われています。
レスキュー隊はまた、海外で発生した災害の救助活動も行っており、2010年に中米のハイチで発生した大地震の際には、36名の隊員を派遣、なんと現場に到着したのは海外からの援助隊の中で最も早かったとのことです。
日本からの旅行者の皆さん、そして私たち在留邦人も、このレスキュー隊のお世話になることがない様、慎重に行動することが最重要ですが、万一、事故や災害に遭遇した際には、極めて頼りになる存在であることに間違いありません。緊急電話番号は「112」ですが、連絡した際の場所を自動的に本部に知らせてくれるスマホのアプリもありますので、事前のインストールもお勧めします。
112アプリ https://safetravel.is/112-iceland-app