大使室より
平成31年2月26日
アイスランドは北極圏の国?



従って、アイスランドは当然「北極圏の国」ということになる訳ですが、ここで素朴な疑問が湧いてきました。最近の某TV局の人気番組ではありませんが、「なぜアイスランドは北極圏の国なの?」というものです。
これまでは常識的に「国土の全部又は一部が北緯66度33分の北極線より北にある」のが北極圏の国だと思っており、アイスランドの場合、本土の北40キロの北極海上にあるグリムセイ島がこの北極線にかかる為、北極圏の国の定義に合致していると理解していました。
ところが最近目にしたレポートによると、この北極線は現在1年間に14.5メートル北に移動しており、2047年頃にはグリムセイ島から完全に離れてしまう、つまり、アイスランドの国土は全て北極線の南に位置することになってしまうのです。そうであれば、その時点でもはや「北極圏の国」ではなくなってしまうのでしょうか?
さらに調べると、一般的に北極圏に共通するのは、高緯度の寒さの為に高木がまともに生育出来ない「森林限界(Tree Line)」と言われる地域であることや、7月の平均気温が10度を超えない地域であること、と言った基準や条件があることが判明しましたが、用いる基準によって該当地域が少しずつ違ってくるし、それほど厳格には定義出来ない様です。
先日、この疑問を当国の北極圏に関する第一人者にぶつける機会に恵まれ、尋ねたところ、「アイスランドは間違いなく北極圏の国です。何故なら、ここで暮らしている国民は、日々北極圏の国だと体感出来るからです」という回答が返って来ました。
直ぐには釈然としない回答だったのですが、徐々に腑に落ちて来ました。確かに、冬の厳しさには北極圏の国であることを日々実感しますし、また、陽光のもと咲き誇るルピナスや、平原を羊や馬が散策する牧歌的な夏の風景は、北極圏とはほど遠いイメージではあるものの、同じ夏に体験する1日中太陽が沈まない「白夜」は、まさに北極圏ならではの現象なのです。
アイスランドの最大の魅力は、夏と冬とで全く異なる豊かな自然の営みや姿を、私たちの身近で見せてくれることですが、これも北極圏の国であるからこその特権であることを再認識しました。