大使室より

平成31年2月27日

サッカーと二国間交流

  
出典:soccer.ru , KSL  

日本サッカー協会の公認指導者研修の一環として、毎年国内各地で開催されているフットボールカンファレンスの第11回目が、先日高知市で開催され、イングランド、フランスの関係者に交じり、アイスランドからもサッカー協会の技術委員長を務めるグンナルソン氏が招待されたとのニュースに接しました。

数年前までほぼ無名に近かったアイスランドのサッカーが突然国際舞台に登場したのは、2016年の欧州選手権。初出場ながら、強豪イングランドを撃破し8強入りする快挙を見せ、そして2年後のW杯ロシア大会の欧州予選を1位で通過、悲願のW杯初出場を果たしたことはみなさんご承知の通りです。

アイスランドは2008年の北京五輪で男子チームが銀メダルを獲得する等、伝統的に室内でできるハンドボールの強国なのですが、近年のサッカーの目覚ましい躍進振りには目を見張るものがあります。

その秘密について、監督や選手からは「スーパースターがいなくても、仲間同士で補い合う結束力の強さが、アイスランドが伝統的に持つ文化だ」といった発言をよく聞きますし、選手とサポーターが一体となりスタジアム中に響くヴァイキング・クラップや、TV中継の視聴率が99%を超える状況を見ていると、さもありなんとの感を強くします。

しかし、躍進の秘密はもちろん文化や伝統だけで説明出来るものではありません。実際には20年ほどかけた地道な戦略の策定と実行があったのです。一方では国内各地にサッカーの為の室内競技場・練習場を作り、それまで筋トレしか出来なかった冬季の練習環境を劇変させました。その結果、今では180前後あるフルサイズの練習場の内、屋内施設が7面(ハーフサイズの屋内施設は6面)あり、そして主要な学校の周辺には150を超える芝のミニピッチがある由です。

また一方では、15年前まではゼロだった欧州サッカー連盟公認のA級・B級コーチを900名規模まで育成し、その結果、子供を含む誰もが、サッカーを始めるその日から容易に質の高いコーチングを受けられる環境が作られたそうで、この点は日本のサッカー協会にとっても大いに参考になりそうです。

前述のハンドボールでは、2017年から男子日本代表チームの監督にダグル・シグルドソン氏を迎え、既に様々な形で日アイスランド交流が進んでいますが、サッカーにおいても、今回のグンナルソン氏の訪日が新たな両国間交流・協力の端緒となることを願ってやみません。