大使室より

令和元年5月4日

夢を諦めない

 
                  

先日、アイスランド大学で学ぶ1人のアイスランド人青年からお聞きした実話を紹介させて頂きます。

彼は、幼い頃から異文化への興味が強く、特に8歳の時にみた「もののけ姫」の独特な世界観に衝撃を受け、以来日本のマンガやアニメ、更には神話や神道といった日本の伝統や文化に強く惹かれ、将来は日本に留学し「日本とアイスランドとの架け橋になりたい」との夢を持つに至りました。

その夢の実現の為の第一歩として、2009年にアイスランド大学の日本語・日本文化学科に入学、順調に勉強をスタートさせましたが、その後、お母様が亡くなるという悲運に見舞われます。

その結果、まだ幼い弟の世話をする必要が生じたことや、経済的な事情もあり、大学からの退学を余儀なくされます。そして、その後アイスランド航空に就職しましたが、同社の客室乗務員として多忙な毎日を送るうちに、彼自身の夢は次第に遠のいて行きました。

そんなある日、同社の機内で、日本に住み教師を務めた経験があるというシニアな米国人婦人に出会います。「日本」という共通項があった為か、限られた時間のなかで、二人は会話を弾ませ、結果的に彼とその婦人は、その後文通を重ねることになります。彼はご婦人の姿にお母様の面影を重ねていたのかも知れません。

文通の中で彼は、彼と日本語・日本文化との出会いや、以前持っていた夢、さらには夢を諦めざるを得なくなった事情等を次第に吐露して行きます。米国人のご婦人も、日本での様々な経験をシェアされると同時に、「決して夢を諦めてはいけない。頑張れば必ず夢は叶えられる!」と彼を励まし続けたそうです。

その励ましに背中を押される様に、彼は一念発起し、2018年にアイスランド大学への復学を果たします。日本語・日本文化の勉強に再度取組んだ結果、先日行われた日本語プレゼンテーション・コンテストでは見事に入賞を果たすほどのレベルに達しました。

そして現在、文部科学省の「国費外国人留学生制度」にも応募中で、近々日本の大学に留学できることを心待ちにしていますし、大使館としても、彼の「両国の架け橋になる」との夢の実現に向け支援して行きたいと考えています。

彼の努力、そして諦めない強い想いに心から敬意を表すると共に、彼を励まして頂いた米国のご婦人にも、厚く御礼申し上げる次第です。