大使室より

令和元年6月14日

日本学習熱と渡邉奨学金

   
  
Photo courtesy: University of Iceland, President's Office


アイスランドに於ける本格的な日本語学習は、2003年の秋、アイスランド大学に「日本語日本文化コース」が設置されたことに始まります。当初は1年限りの副専攻学科として静かに始まったこのクラスは、事前の期待を大きく上回り、あっという間に学生数を増やし、同大学に13ある外国語コースの中で英語に次いで人気の高い(学生数が多い)コースに成長しています。
 
常時、70~90名の学生を擁し、2年間アイスランドで勉強した後、1年間日本の大学に留学することでDiplomaが得られる3年間コースです。同大学と交換留学生協定を締結している日本の大学数は21を数えていますし、日本への留学を経験した同窓会組織の会員数も300人に達する勢いです。
 
絶対数としては大きな数字ではないかも知れませんが、対人口比で考えると「日本留学大国」であることに間違いはありません。そしてこの日本学習熱・留学熱を側面から支援してくれているのが、様々な助成制度や奨学金制度です。
 
日本政府が提供する「国費外国人留学生制度」や「MIRAIプログラム」、笹川財団が提供する日本と北欧5ヶ国に特化した助成制度等、様々なものがありますが、今回特にご紹介したいのは、日本とアイスランド間に特化した「渡邊信託基金奨学金」です。
 
渡邉奨学金は、ビジネスマンとして成功を納めた渡邊利三氏が、私財を投じて2008年に立ち上げられた日本とアイスランドの学生・研究者に供与される奨学金です。
 
ご自身が学生の時、ウィーン国際奨学金を得て米国の大学で学ぶことが出来たことに感謝し、ビジネスから引退後は若者たちの留学支援を中心とする教育財団事業に取り組まれ、その一環としてこの奨学金制度を作られました。日米間の奨学金制度に加え、アイスランドも選ばれたのは、米国の大学で学友であり、後にアイスランドの首相になられたゲイル・ホルデ氏との絆が主因であったそうです。
 
この奨学金の供与が始まってから今日までに、アイスランドの学生・研究者宛に47件、日本の学生・研究者に26件、合計73件の奨学金が供与され、両国間の教育・文化・学術面での交流に多大な貢献をされて来ました。そして、2019年5月には、この貢献が評価され、ヨハネソン大統領から当国最高位のOrder of Falcon勲章が授与されました。
 
尚、今年の渡邉奨学金授与式ではアイスランド大学の学長から嬉しいニュースが発表されました。長らく「英語に次いで人気の高い(コース)」との形容詞が定着していた日本語日本文化コースですが、遂に「今年は学生数が百名に達し、13の外国語コースの中で最も人気の高い(学生数の多い)コースになった!」と言うものです。
 
両国大学関係者の方々、そして渡邉さんの長期に亘るご支援・ご尽力に対し、厚く御礼申し上げる次第です。