大使室より
男女平等先進国




写真上左)世界初の(民選)女性大統領ヴィグディス・フィンボガドッティル
写真下右)ヨハネソン大統領
アイスランドは,世界経済フォーラムが毎年発表する「世界ジェンダー・ギャップ指数」で,ジェンダー格差が少ない国として10年連続で世界1位に輝いているジェンダー平等先進国です。
確かに,古くから,女性の相続権が男性と同一になった世界最初の国(1850年),世界で最初に(民選)女性大統領が誕生した国(1980年)と言った実績を持ち,今でも国会議員の約4割が女性,大学卒業生の66%が女性,女性の就業率80%以上,と言った輝かしい数字が並びます。
しかし,長くジェンダー問題に係わって来た女性運動家の方のご意見をうかがうと「男女平等が肌で感じられる様になったのは,2000年に育児休暇法が改定され,父親にも最低3ヶ月間の育児休暇取得が義務付けられてからだ」とのことでした。
この法律では,子供の出生後の育児休暇(有給)は合計9ヶ月付与され,3ヶ月毎に夫婦が交替で休暇を取得,最後の3ヶ月は夫婦で話し合いの上いずれかが取得するとの立て付けで,母親が全てを取得することは出来ないことになっています。さらに現在,この育児休暇期間を12ヶ月に延長する法案も検討されており,これが承認されると父親・母親共に5ヶ月間,残りの2ヶ月を夫婦いずれかで取得することになります。
実際にこの育児休暇を取得した男性に話を聞いてみると「当国でも“育児は女性がするもの”との考え方が長く根強かったが,実際に体験してみて,初めて育児の喜びを知ることが出来た」と言った声が多いのも事実です。
この様に,男女格差の解消に関して世界をリードして来たアイスランドですが,その改善努力は止まるところを知りません。
実際,2018年1月には「男女平等法」が改正され,世界で初めて男女間の賃金格差を違法とする,所謂「同一賃金認証法」が施行され,従業員25名以上の企業・組織は、男女間の賃金平等を実践していることを示す証明書を取得する義務を負うことになり,違反企業には1日当たり最大500ドル前後の罰金が科されることになりました。
一方で,「女性が輝く社会」を最重要課題の1つに挙げる日本政府としても,安倍総理の肝いりで,2014年から東京で国際女性会議WAW!(World Assembly for Women)を開催することで,内外のこの分野でのトップ・リーダーを招き,目標の実現に向けた議論を重ねています。
そして,2020年4月,東京で開催される第六回会議に,キーノート・スピーカーの一人として当国のヨハネソン大統領が招待されました。大統領に白羽の矢が立った理由は,UN Women(ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関)が推進する運動・プログラムの一つ,“IMPACT 10x10x10”で,世界規模の変革を起こしうる「政府指導者の10人」の中に,安倍首相と並びヨハネソン大統領も選出されている為です。
日本がアイスランドの経験から学ぶべき点は多いと思いますので,大統領の参加を契機として,この分野で二国間の交流・協力関係が一層強化されることを願っています。