大使室より

令和元年12月5日

クリスマスと13人のサンタ

 
 
写真右下)ナマハゲ
 

アイスランドのクリスマス・シーズンはクリスマスの4週間前の日曜日から始まります。

 

街中や一般家屋の内外に大小さまざまなクリスマス・ツリーや,色とりどりのイルミネーションが登場し,クリスマス・ムードを盛り上げることは日本と同じですが,日照時間が極端に短くなるこの時期の当国での電飾には,格別なものがあります。

 

日本や他国と大きく異なるのは,アイスランドのクリスマスには13人のサンタが登場するという点です。彼らは北欧神話に登場するトロール(妖精)やオーグル(鬼)の子孫と言われ、ユール・ラッズ(Yule Lads)と呼ばれています。クリスマスの13日前となる1212日から24日まで1人ずつ山から街へ下りてきて悪さをするとされ,長く子供たちを怖がらせる存在でした。

 

しかし,18世紀の中盤に制定された法律により,親が子供をユール・ラッズの伝承で怖がらせることを禁じた為、ラッズの性格も変容し,加えて20世紀に入り米国のサンタクロースの影響を受け,徐々に,プレゼントをくれるサンタ的な存在になって来たとされています。

 

今では,子供たちは1212日の夜になると自分の部屋の窓際に綺麗な靴を用意し、24日の夜までに下りて来る13人のラッズ(サンタ)の11人が靴の中にプレゼントを入れてくれるのを毎日楽しみにしています。プレゼントは、お菓子だったり、小さな玩具だったり、日替わりで毎日何かが入って居り、24日のプレゼントが最も高価、或いは子供達が最も欲しいものになるそうです。

 

クリスマスが正式に始まるのは、1224日の夜6時。通常,その前にお墓参りをしたり、敬虔なクリスチャンは教会でミサに参加するなどして,クリスマスを迎えます。典型的なクリスマスディナーは豚や羊の燻製。ご馳走のあとはツリーの下に集めておいたプレゼントを開き、クリスマスカードをあける。そして、25日には、日本の正月のように親戚が一堂に会し、昼食を共にする由。

 

そしてラッズ達は、25日から1人ずつ山に帰って行き、最後の1人が帰るのが16日ということで、16日が正式にホリデー・シーズンの終わりとなります。

 

子どもたちを怖がらせるユール・ラッズの伝承は,日本の秋田県男鹿半島を中心に伝承されている,大晦日の晩に「泣く子や怠け者はいないか」と言いながら現れる「なまはげ」を想起させられます。勿論,直接的な関係はない筈ですし,単純に比較出来るものではありませんが,未知なるものへの畏怖の念や,恐怖心を子供のしつけの一助とする方法には万国共通のものがあったのでしょうか。

 

ラッズに成り代わり(?)毎年,子供1人当たり13個のプレゼントを用意する必要がある当国の親御さん達のことを思えば,その苦労はいかばかりかと同情したくもなるのですが,あるアイスランド人曰く「確かに大変な面はあるけど,その一方で13日間毎日子供達の喜ぶ顔が見られるこのシーズンは、親にとっても大切な嬉しいシーズンなんだ」とのことでした。

なるほど,納得です!