大使室より

平成29年6月14日

音楽が紡ぐ二国間関係



現在私が住んでいる日本大使公邸は、世界的に有名なピアニスト・指揮者であるウラディーミル・アシュケナージ氏が1972年に建築され、78年にスイスに移住されるまで住んでおられた家で、多くのアイスランドの方には、「アシュケナージ・ハウス」として有名です。
 
先日、そのアシュケナージ氏ご夫妻を公邸での昼食会にお招きする機会を得ました。丁度、ハルパでのコンサートの為に一時帰国された時でした。同氏は旧ソビエト連邦出身ですが、アイスランド人の奥様とご結婚、アイスランド国籍も取得され、当国をベースに文字通り国際的に活躍される一方で、当国の交響楽団の指導や、コンサートホール(現在のハルパ)の建設支援等にも尽力されていました。従って、活動拠点をスイスに移されてからも、多くのアイスランドの方々から「アシュケナージ氏は国の宝だ」と敬愛されています。
 
一方で、同氏は日本とも極めて長く深い関係をお持ちです。ご本人曰く、1965年に初訪日して以来、ほぼ毎年日本を訪問、北海道から沖縄まで全国津々浦々を回られた由です。最近では2000年に初めてNHK交響楽団の定期公演の指揮台に立ち、2004年から2007年までは音楽監督を務められた他、退任後も同楽団の桂冠指揮者としてご活躍中です。日本食にも精通しておられ、「寿司を食べ出したら止まらない」とも仰っていました。日本のピアニストでは誰が好きかとお尋ねすると「辻井伸行氏が素晴らしい!」とご夫妻で絶賛されました。
 
昼食会に同席頂いたアイスランド交響楽団の代表者アルナさんによると、交響楽団としては、金融危機後の初の長期海外公演として、来年後半にも日本の主要都市をまわる大演奏会を検討中で、辻井伸行氏のピアノ演奏とアシュケナージ氏による指揮を希望されているとのこと。
 
アイスランドと日本との音楽交流の歴史に、新たな1ページを刻むであろう交響楽団の日本公演の実現を祈りつつ、両国の絆の更なる強化に貢献して下さっているアシュケナージ氏に、敬意と感謝の念をお伝えする昼食会になりました。