「氷の国」アイスランド
アイスランドにやってきたのは8月。日本の暑さを後にしてきた身には、すがすがしい涼しさでした。
そして、冬のアイスランド。さぞや、凍り付くような寒さが・・・と思いきや、近海にながれる暖流のおかげでそれほど温度は低くなりません。1月・2月の月平均気温はゼロ度前後。北海道よりも、ずっとマイルドです。
では、意外と暖かいのかと言われれば・・・やはり、寒いです。何よりも、吹き荒れる風の冷たさ。そして、日照時間が短いため、陽射しの暖かさを皮膚でも視覚的にも感じることができません。白黒の世界に追い込まれたような、冷たく寒々した毎日です。
そこで、心機一転。いっそ、氷の世界に飛び込もうではありませんか!と、訪れたのが、氷の洞窟。アイス・ケイブとか、クリスタル・ケイブとか呼ばれており、ヴァトナ・ヨークルという欧州最大の氷河の中に存在しています。
雪が白いのは、水分に空気を含んだまま凍っているから。氷河は、水が凍ると言うよりも、雪が堆積していくため白いのですが、長年の重みでドンドン空気が抜けてゆき、氷河の下の方の氷は空気の抜けた青色になっているのだそうです。そして、氷河の下を静かに流れる地下水脈に、氷のかけらが割れて落ちてできた空間が、この洞窟。だから、氷は青いし、断面は鋭角では無くなだらかなカーブを描いているのです。
洞窟内では、自然を破壊しないように、そして地下水脈に足を取られないように、ガイドの指示に従って歩きます。また自然の青色を写すために、フラッシュは使用せずに撮影をします。この写真は、私の14歳の息子が自分のカメラで撮影したものです。プロのカメラマンでも無い、プロ仕様のカメラでも無いのに、こんなに幻想的な写真ができあがりました。しかし、身体全体が、この氷河の洞窟の中に囲まれた者としては、現実はもっと素晴らしかったとしか伝えようがありません。
ただ、このような氷河の洞窟があるということは、表面積ですら縮小傾向にある氷河が、体積としても小さくなっている(溶けている)ことの実証ともいえます。幻想的な眺めに心を動かされると同時に、これが本当に幻想になってしまう日が来るのでは無いかともおそれるのでした。